愛と云う名の全て。
日が傾くにつれて雨は上がり、やがて雲の切れ間から満月が顔を覗かせていた。
国破れて山河あり。
いつもよりキツめの煙草を、寒さに負けるようにしてもみ消した。
何も変わってないよな。
ふと、誰に問いかけるでもなく言葉が出てくる。
もう少し楽に生きられるとしたら、俺はもう少しだけ違う自分になれていたのだろうか。卒業旅行や夏季休暇を利用してディズニーシーやUSJに行ったり、ZOZOTOWNで当たり前のように服を買ったり。みんなより逸脱しない範囲で生きていられたら、あと少しだけ楽だったのだろうか。小さなSOSに、誰かが気づいて咄嗟に駆けつけてくれたりしたのだろうか。気がつけば、こんなことでもう20年近く悩んでいる。
思えば、スクールカーストのどこに自分が属していたのか分からない。下なのか上なのか、それとも中間なのか。どの層とも相容れない部分が多かった気がする。もっと単純だったら、どう変わっていたのだろう。
弱いな。
もう割り切ればいいじゃないか。
そう自分に呟いた。でも、そう呟いた自分がどこから来たのか分からない。心の奥底なのか、それとも薄皮一枚の表面なのか。
例えば明日、僕がドアノブで首を吊ったとして、次にそのドアが開くのはいつなのだろうか。一週間以上は開かない気がする。または一ヶ月以上。
お酒はダメだね。悲しい想像ばかりが増幅してしまう。もっと楽しく飲めたらね。
愛という名の全てを知ってしまったわけではないけれど、もう何が愛なのか分からなくなっちゃったな。ただ、若いからで済まさないでよね。大丈夫なんて無責任に言わないで。