シティボーイは泣かない。

古い引き出しの奥に、ずっとしまわれていた手紙のような話。

抜け殻

また抜け殻をどこかに落としてきてしまった。

歯ブラシだったか、おそろいのマグカップだったか、それともスリッパだったか定かではないが、どこかに落としてきてしまった。たぶんあの部屋なのだろうと若干検討はつくのだが、探しに行くつもりはない。

抜け殻を落としてしまうことは以前にもあった。決まってどこに行ったのか分からなくなるし、何が抜け殻だったのかも分からなくなるときもある。そして、そのうち落としてしまった事実さえも忘れてしまう。

先日。数年前の抜け殻がひょんなとこから見つかった。写真だった。何の屈託もない無邪気な笑顔が鮮明に残っていた。押入れの掃除をしていたら偶然見つけたのだ。写真の抜け殻は最もハッキリしている。自らの抜け殻を破り捨てるなんてこともできず、また元の場所に戻した。きっとまた忘れる。

抜け殻はしっかりと処理をしてしまったはずでも、処理しきれてないことが多い。