シティボーイは泣かない。

古い引き出しの奥に、ずっとしまわれていた手紙のような話。

19時間前は木漏れ日の下、野鳥たちの囀る森の中にいたのに、今は都会のコンクリートジャングルの中にいる。眠らない街、渋谷。夜行バスは有り得ないほどに早朝に目的地へと到着するので、適当に忠犬ハチ公前までメトロに乗って出てきた。携帯をフルまで充電しておこうと近場のマックに入ったのに、肝心のコンセントプラグは見当たらない。地下100席、2階100席。あまりにも多い座席数に多少気圧される。机に突っ伏して寝ている人達が視界の隅にちらつく。深夜まで飲み歩いての朝帰りなのだろうか。それからスーツ姿のサラリーマンが足早に店内を歩く。足早といっても、都会ではこれが普通。ノーマルモードのだろう。

薄いベーコンの挟まったハンバーガーを食べ終えたところで電車が通過した。そういえば先輩は東京に行ったんだっけ。この街ですれ違っても、お互い認識し合えそうにないな。僕達の住んでいる街で若者といえば、大抵が見た事のある顔。もしくは知り合い。友達。

交差点近くで人が集まっているけれど、みんな手元の携帯を眺めているか、それか足下を見ているか。いずれにせよ、誰も空を見ない。禍々しいほどに黒いカラスが頭上を飛び回っている。