シティボーイは泣かない。

古い引き出しの奥に、ずっとしまわれていた手紙のような話。

本当は全然シティボーイなんかじゃない

自分が都会に住もうと思うなんて、3年前は考えつきもしなかった。どこか遠くの田舎の街で、好きな人と幸せに暮らしていくと思っていた。本当は全然シティボーイなんかじゃない。人口50万人弱の地方中枢都市で生まれて、人口10万人強の田舎の港町に移り住んだ。地下鉄の乗り方も知らなかった。公共交通機関の人の多さには未だに慣れない。ICカードを使って改札を初めて抜けたのは半年前。東京の街を初めてこの目で見たのも、つい4ヶ月ほど前。本当にシティボーイなんかじゃない。もしも、僕が都会に住んだとして。初めの1年は必ず精神的にまいる。それでも、僕はもっと新しいものが見たい。新しいことを知りたい。 

ずっと、何と戦っているのか自問自答してきた。綺麗な言葉を並べて、綺麗な視点を見せつけてきた。一方で、心の中の自分は溢れんばかりの野心を抱えていた。大人になるにつれて、感受性はある程度殺さなければ生きていけない。押し殺そうと必死に隠してきた。泣きたい日もたくさんある。それでも、ずっと自分のプライドと戦っている。

プライドなんてない方が楽だ。運命に流されるままに生きて、つまづいて転んで立ち上がっての繰り返し。僕は、自分のことを特別だなんて微塵も思わない。きっと、君もあの子もあいつも全部一緒。それでも、僕が知っている誰よりも強くなりたい。過去の自分に負けたくない。ダサいキャップを被ってブツブツ言いながらママチャリを押して歩くような年寄りになりたくない。電車の4人用の席で、鞄を横に置いて足を伸ばすような中年にもなりたくない。小学6年生のころに書いた文集。「恥ずかしくない大人になりたい。」

 

明日の朝、僕は新宿にいる。